Blog | 鉄魅録 – GANZ METAL FAB

GANZ Sewing Division

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GANZのものづくりに新たに加わった「Sewing Division」(縫製)について、これまでの経緯や概要、今後の展開などを整理しながらご紹介できればと思います。

「GANZが縫製?」と疑問をもたれた方も、きっとご納得いただけると思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。

鉄製品と縫製の関わり

画像は2015年に1台目が完成し、2016年からはGMPのコラボアイテムとして制作しているソファです。

クッション部分は、専門のメーカーさんに依頼して制作していただいているのですが、2015年の時点で「職人さんの高齢化と後継者不足が深刻な問題になっている」という話を聞いていました。もちろん大きなメーカーさんなので現在でも制作はしていただけるのですが、問題はどんどん深刻化しているようです。

「今後はさらに状況が厳しくなり、今のクオリティや様々な条件を維持できなくなる可能性があることはご理解ください。」と、担当の方から丁寧に説明をいただいています。

可能性の追求

みなさまもご存じのとおり、椅子(スツール)やソファなど、鉄製品とこういった縫製物とは深い関わりをもちながら共存しています。ものづくりを続けていると、鉄製品と縫製物それぞれに「デザイン性と機能性」を追求してしまいます。当然ながらこれらの「バランス」も重要になってきます。鉄とウッドも同じですね。。。

企画、デザイン、設計、制作、販売のうち、ごく一部を除いたほとんどの作業を僕たち2人で納得いくまで追求するのが「GANZのものづくり」の基本的なスタンスです。(オーダー制作の場合は、お客様のご要望を軸に進行します。)

これは決して外注することを否定しているのではありません。敬意をもって作業を依頼するためには、ある程度の事を把握できていて、的確な指示書の作成ができるだけの知識を持っていたい、という僕の勝手な願望です。

しかし普段のものづくりの現場では、実際に作ってみてからサイズやバランスを修正したり、現物から寸法を出したりすることが日常的に起こります。数字や図面で表現し難いこともたくさんでてきます。

これを解決するために、結局自分たちで制作できるように内製化してしまっているのです。塗装、ウッド、電気・・・あげたらきりがありません。。。

このように、「中長期目線での生産環境の安定化」と、「自分たちが納得するまでイメージを追求するため」に、GANZのものづくりに「縫製」を加えることにしました。

準備期間と自然な流れ

本格的に環境を整えて準備を始めたのは2020年からなのですが、実はそれまでにもここに繋がる自然な流れがいくつも存在していたのです。

幼い頃からの環境と母のミシン

主にグラフィックデザインを担当し、近年は GANZ FACTORY STORE の店長でもある Ryoko は、生まれたときから母が自宅に工房を構えて縫製の仕事をしているちょっと特殊な環境で育ちました。幼少期に母からJUKIのデジタルミシンを与えられ、日常的にミシンに触れながら地味に続けている趣味のひとつでもあるのです。(このミシンは今でも手元にあって健在です)

そんな母がずっと使ってきた愛機を買い換えることになり、生まれたときから目にしていた母のミシンを譲り受けることになったのです。(これが2011年)

工業用ミシンのデザインと構造をみて、機械好きの僕がワクワクしないわけがありません。60Hzの静岡仕様に改造しつつ、故障箇所を修理、各部をメンテナンスして完全復活しましたが、ネーム付けくらいしか出番がないまま時が流れます。

そしてGFSオープン直後の2020年の感染拡大のとき、マスクの配布企画を思いつきで始め、このミシンが大活躍することになりました。型紙おこし、サンプル制作を経て数週間で完全オリジナルのマスクの配布(初回)を開始することができました。その後も多くのご要望をいただき、総配布枚数100枚以上をこのミシンで制作しました。

バイクシートとヘルメットのリペア

ちょっと時代を遡り、まだGANZが埼玉を拠点に活動していた2008年ごろは、バイクのカスタムの相談もいただいていました。

上の画像は、シートベースからオリジナルで制作し、ウレタン、本革・手縫いの表皮まで全てGANZで制作したハーレー用のサドルシートです。

こちらはシートベースとウレタン加工をGANZで行ない、表皮を外注でお願いしたハーレー用のシングルシートです。このときには表皮の縫製が自分でできないために、事前のシュミレーションや打合せに多くの時間を割いたことを今でも鮮明に覚えています。

こちらはヴィンテージヘルメットの内装リペアの画像です。構造や素材を研究して、試行錯誤しながら全作業をGANZで行ないました。

このときからすでに「レザーなどの厚物が太番手の糸でしっかり縫えるミシンが欲しい」という課題が上がっていたのです。

2020年にGFSがオープンして、ゲルガやロストコントロールのアウトレットアイテムを取り扱うようになると、デニムの裾上げやオリジナルギアの制作などに対する熱量がアップしていき、このとき「しっかりと縫製環境を整えてGANZの業務に組み込もう」と決意しました。

いつものように機械(今回は厚物用ミシン)を探し、分解・メンテナンスして、環境を構築するところから始めました。まずは自分たちが必要な身近なものをどんどん制作しながら、縫製に関する様々な知識を詰め込み、実際に手を動かして実践して積み上げていきました。

GANZの得意分野である「ジグやガイド」を贅沢に制作して、技術不足を補うための工夫も盛り込み、2人でミシンを操っていたら、あっという間に3年経ってしまいました。

素材と耐久性

しばらくの間は、メインの素材を「ダック生地と合皮」に絞っていこうと思っています。耐久性のあるこれらの素材をインテリアやギアに落とし込んで、自分たちのイメージをどれだけ掛け合わせることができるのかが、GANZの新しい挑戦です。

実際にいろいろ企画を進めていますが、相変わらずのスローペースですので気長にお付き合いいただけたら嬉しいです。

Sewing Products 第一弾

第一弾、ダック生地のティッシュケースがリリースされました。
GFS店頭および、オンラインストアよりご購入いただけます。

TISSUE CASE

>> TISSUE CASE – 3 Colors

長々とご紹介してきましたが、様々な経緯があり、ある意味では自然な流れで「縫製」をGANZのものづくりに組み込むことになりました。

鉄を中心とした金属を主軸に、様々なアイテムを生み出していくことに変わりはございません。表現できる幅がまた少し広がりましたので、今後の展開も楽しみに見守っていただけましたら幸いです。