古い部品から生まれる一点物の灰皿・製作記

旧車のエンジン部品や機械部品から3種類の灰皿が生まれました




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Ashtray につきまして
今日は、使った素材のことや 製作中の様子などをご紹介してみようと思います。

一点物のアイテムが誕生するまでの課程を少しですが感じてみてください。





一部の加工が進んでしまっている部分もございますが、これが今回の食材。
いずれも旧い機械や車の部品で、サイズや雰囲気の良い物をコツコツストックしてきたものです。




 



まずは油汚れや浮き錆などを洗浄します。綺麗にしすぎてせっかくの経年変化をリセットしてしまわないように加減して、製作中に影響が出てしまったり 使用中に周りを汚してしまわないギリギリにとどめます。




 



これはフォルクスワーゲンのシリンダーです。1970年代はじめ、空冷時代のワーゲンに実際に使われていたもので、おそらく10万キロぐらいは走行しているでしょう。

オイル管理があまり良くなく、エンジン部品としては摩耗限界を超えていて天寿を全うしています。
(シリンダーの基本デザイン自体は1940年代からほとんど変わっていません。排気量の関係でサイズは変わってきます。)


通常なら廃棄処分されるのでしょうが、空冷エンジン特有の冷却フィンはとても雰囲気が良く、水平対向の4気筒エンジンでありながら4気筒全てが独立しているので単品で見たらバイクのシリンダーのような佇まいが気に入っていて「そのうち何かに使うだろう」とストックしていました。
(最近の水冷エンジンのシリンダーには冷却フィンが無くツルッとしていて、しかも一体型になっているものがほとんどです。)






洗浄したシリンダーをコンターマシン(バンドソー)で切断します。

このシリンダーの上部を使って Table Ashtray [LTDAT03] を製作していきます。





 






 


続いて切断面を旋盤で仕上げます。

綺麗な平面では無く年輪のような段差を付けて装飾してみました。











 


底面になる材料を切り出し、これも旋盤で加工します。

外径をシリンダーに合わせて、肉厚を落としながらセンターの盛り上がりを出していきます。




 



フィンのアールに合わせてギャンズプレートを真鍮板から製作したら軽くエイジング。
センターのボスは丸棒から削り出し、トップの装飾は丸棒を炙って叩いて成型して製作。

仮組みしてボルト穴の位置だしや、仕上がりのバランスを微調整します。
ここからは加工・仮組を繰り返し時間を掛けて完成を迎えます。




 



つづいてシリンダーの下側を料理して、Floor Stand Ashtray T1 “Cylinder Top” [LTDAT01]を製作していきます。


スタンドタイプの灰皿ですが、カップがスタンドと一体型では吸い殻が溜まる度にスタンドごとひっくり返すことになりますので、よりスマートに使っていただける様にカップを脱着できるようにしました。

脱着の構造もできるだけスマートにしたいので一気に製作の手間がアップします。

画像はカップ下側のボス。緩いアールと呑み込みも旋盤で削り出します。





 



底板も切り出し・仕上げたらシリンダーと接合していきます。

シリンダーも新たに製作した底板やボスも全て鉄製ですが、同じ鉄でもシリンダーは鋳鉄製(鋳物)、製作部分は圧延鋼材で特性が異なります。

鋳物は基本的に溶接に不向きとされています。
(素材によっては溶接棒や溶接方法で対応できるものもありますが、強度面などで用途が制限される場合が多いです。)

そこで今回は溶接(母材同士を溶かして接合する)では無く、ロウ付け(母材は溶かさず母材同士の隙間にロウ材を流し込んで接合する)を選択しました。

[LTDAT03]もこの部分は同様にロウ付けで対応しました。







トップの装飾を製作。これがネジ式になっていてカップのロックを兼ねています。
フラットバーをリング状に加工したら、シリンダーのカップとの位置関係を決めていきます。








スタンドの支柱部分からリングに繋がる部分は大きめのナットを溶接した丸棒から削り出し、フラットバーで接続します。
細かい部分の仕上げが後々効いてくるので手を抜けません。









なんだか画像が歯抜け状態で連続した解説ができなくてすみません。
これはセンターパイプと脚になるプーリーを接続する部分を削り出しているところ。

完成までの画像がありませんでしたので、ここからは想像でお願いいたします。
基本的には微調整をしながら仮組・修正・溶接を繰り返し、完成後に全体の雰囲気を合わせる意味で軽くエイジングしたり○○したりして仕上げます。

あくまでも製作したのは今現在の2013年ですから、アンティークを模している訳でも過度なエイジングでより古さを強調しようと思っている訳でもございません。
あくまでも素材の雰囲気を生かす為に、新しく製作した部分をうまく調和させるのが目的です。





 



つづきまして、またしても自動車のエンジン部品のプーリーをカップにした

Floor Stand Ashtray T2“Pulley Top” [LTDAT02]

を製作していきます。(画像はこの部品のもでは無く参考画像です)



エンジンの冷却水を循環するウォーターポンプに付けられるプーリーです。

最近の車はVベルトを使わなくなってきています。機能的には優れているのでしょうがVベルト用のプーリーの方が格好良くて好きです。

この手のプーリーは意外に丁度良いサイズが無く、サイズ・形状ともに絶妙な○○○製は外車ならではの肉厚と、表面処理の甘さから来る腐食具合がとても良い雰囲気です。
(ご希望でしたらご購入が決まったお客様には部品の詳細をお教えしますw)








カップの底板、ボス、トップの装飾を削り出したら仮組みしてチェックします。








こちらは鋳物では無いので溶接で接合します。








トップの装飾についてもう少しだけ。

真鍮の丸棒から削り出していきます。加工手順は人それぞれだと思いますが僕はこんな手順で製作しています。ローレット加工(滑り止めのギザギザ)は今回はアヤ目を使っています。いい感じに仕上がりました。








これもカップのロックを兼ねているので、ネジを切ってから
軽くエイジングしておきます。一気に鉄との違和感が無くなります。
じわっと主張する素材の違いが全体の雰囲気をまとめていると思います。


今回の灰皿企画は旧い素材をベースにしていますが、あくまでも僕自身がイメージするデザインと構造で 現代に新しく製作するものでありたいと思って製作にとりかかりました。

この製作記的な記事も最後までアップするか悩みました。
完成形を素直に評価していただいた方が良いのでは無いかと・・・

でも、僕がつくった灰皿を手にする可能性のある方の中にたった一人でも素材や製作内容に興味がある方がいてくれるなら、その方のためにアップしようと思ってこの記事を書かせていただきました。


※2013年の記事ですが旧ブログより転載してご紹介しています。
※2018年更新済み